伊予水引(いよみずひき)は、愛媛県四国中央市で作られている水引と水引製品です。水引は、和紙をこより状にして糊を引いた紐で、祝儀袋や贈り物を結ぶのに使われます。四国中央市は製紙業が盛んな「紙のまち」として知られ、江戸時代に髪を結う元結(もとゆい)づくりから水引の生産が始まりました。明治時代に断髪令で元結の需要が減ると、水引や金封、結納飾りへと製品を広げていきます。現在は長野県飯田市と並ぶ、水引の二大産地の一つとされています。愛媛県の伝統的特産品に「水引・水引製品」として指定されており、1958年(昭和33年)に設立された伊予水引金封協同組合には、19社が名を連ねています。組合員の中から多くの伝統工芸士が生まれ、結納飾りの技を生かしたアクセサリーなど、新しい製品づくりも進んでいます。
発祥
四国中央市は、法皇山脈(ほうおうさんみゃく)の山あいで取れる三椏(みつまた)や楮(こうぞ)、豊かな水、紙の乾燥に向いた松原に恵まれ、紙漉きの里として栄えました。伊予水引は、この紙漉きとともに江戸時代の元結づくりから始まったとされます。元結の製造が始まったのは江戸時代中期の元禄年間と伝わります。
歴史
元結づくりの始まりには、信州から来た職人が旧伊予三島市村松町や旧川之江市妻鳥町(めんどりちょう)の新浜海岸で始めたという説と、阿波や土佐から伝わったという説があります。明治維新後の断髪令で元結の需要が減ると、産地は同じ素材の水引の生産へ移りました。その後は色水引や金銀の水引、金封、結納飾り、水引工芸品の開発を進め、全国有数の産地となりました。1928年(昭和3年)の御大典(ごたいてん)の際には、宮内省の御買上を受けたと組合が伝えています。
特徴
水引の名は、紙のこよりに水糊を引いて乾かす作業を繰り返す製法に由来するという説があります。白地を作る工程は「漕(こぎ)」と呼ばれ、長年の修業が必要な最も難しい作業とされます。四国中央市には製紙や紙加工の会社が集まっており、伝統の技を受け継ぎながら、機械化や新商品の開発にも早くから取り組んできました。
使用される素材
制作工程
- 1
紙糸づくり
大きな巻紙の和紙を、幅2センチほどのテープ状に裁断します。これに水分を与えて「より機」でよりを入れ、さらにもう一度強くよりをかけて、芯のしっかりした紙糸にします。機械水引では、この紐を「つぐり」と呼びます。
- 2
漕(こぎ)
30メートル弱に切った紙糸約130本を、帯を広げたように「はた場」と呼ぶ空き地に張ります。クレー粉と布海苔を混ぜた糊を塗って白地を作る作業が「漕」で、手漕ぎ水引の工程で最も難しいとされます。
- 3
染め・裁断
白地を作った紙糸を、赤・黒・黄などの染料で等間隔に染め分けます。乾いたら1.8メートルほどに裁断して、水引ができあがります。機械水引では、糊を塗って温風で乾かしたあと、必要な長さだけ着色して色を分けます。
- 4
切断・束ね
乾いた水引を必要な長さに切り、決められた本数で束ねて出荷します。できた水引は金封や熨斗(のし)、結納飾りなどに加工されます。結んだり組み合わせたりして、鶴や松などの立体的な水引細工にも仕立てられます。
| 主な産地 |
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職人・工房
伊予水引金封協同組合
1958年(昭和33年)に設立された産地組合で、四国中央市妻鳥町に事務所を置きます。資材の共同購入や販売のほか、水引文化の継承や新しい用途の開発に取り組んでいます。組合員の有志が、ブランド「MIMUS(ミムス)」を立ち上げました。
公式サイト →株式会社今村紙工
伊予水引金封協同組合の組合員です。伝統工芸士の今村八千代さんが所属しています。今村さんはMIMUSの取り組みに関わり、次の世代に伊予水引を引き継ぐための受け皿づくりを使命と語っています。
株式会社有高扇山堂
伊予水引金封協同組合の組合員で、創業90年を超える水引メーカーと紹介されています。組合のサイトでは、伝統工芸士として有高智佳代さんと篠永芳美さんが紹介されています。コースターやイヤリングなど、新しい水引製品も手がけています。
購入方法
- MIMUS 公式オンラインショップ
- 伊予水引金封協同組合のブランドの通販サイトです。結納飾りを小さく仕立てた「子無垢」は27,500円〜88,000円で紹介されています。昭和の手漕ぎ水引を使ったアクセサリー「いにしへ」は3,300円程度からです。購入先を見る →PR
体験施設
愛媛県産業技術研究所 紙産業技術センター 水引体験コーナー
愛媛県四国中央市妻鳥町乙127 研究交流棟2階
伝統的な結び方を、初級から上級まで段階に応じて学べるコーナーです。体験は無料で、所要時間は約30分と紹介されています。10名以上の団体は事前予約が必要です。月曜日と年末年始は休みです。
詳細を見る →紙のまち資料館
愛媛県四国中央市川之江町4069-1
紙のまちの歴史や製紙工程を、模型やパネルで紹介する資料館です。入館は無料です。水引細工などの紙の講座も年間を通して行っていると紹介されています。手漉き和紙体験は基本料金200円で、月曜日が休館です。
よくある質問
Q. 伊予水引と飯田水引の違いは何ですか?
A. どちらも江戸時代の元結づくりから水引の産地になった点が共通しています。伊予水引の四国中央市は製紙業の町で、紙関連の会社が集まる環境を生かして、機械化や金封・結納品の開発を早くから進めてきたとされます。
Q. 昔の水引を使ったアクセサリーがあるのはなぜですか?
A. MIMUSの「いにしへ」は、1950〜60年代に作られた手漕ぎ水引の在庫を使ったアクセサリーです。当時と同じ色合いや質感の水引は、今は作れないと紹介されています。眠っていた素材を、現代の暮らしで使える形に生かしています。