1 / 2伊予かすり(伊予絣)は、愛媛県松山市を中心に作られてきた木綿の絣(かすり)です。絣とは、柄にしたい部分を糸でくくって染まらないようにし、藍で染めた糸を柄を合わせながら織り上げる織物です。久留米絣(福岡県)、備後絣(広島県)と並ぶ日本三大絣の一つに数えられます。江戸時代後期の享和年間(1801〜1804年)に、伊予郡今出(いまず、現在の松山市西垣生町)の鍵谷(かぎや)カナが考案したと伝わります。「今出絣(いまずがすり)」とも呼ばれました。明治時代に生産が大きく伸び、1904年(明治37年)には全国一の生産量になったとされます。白と紺の対比が際立つ井桁(いげた)や十字の柄が代表的で、丈夫なことから普段着や作業着に使われてきました。愛媛県の伝統的特産品で、2025年(令和7年)には伊予絣の技術が県の無形文化財に指定されました。松山市大街道の伊予かすり会館では、展示見学や藍染め体験ができます。
発祥
鍵谷カナは1782年(天明2年)、伊予郡垣生村今出に生まれました。農家の副業だった伊予結城(いよゆうき)と呼ばれる縞木綿を織るなかで、わら屋根に使われた古竹に、縛った縄の跡が白く残っているのを見て、絣の着想を得たと伝わります。享和年間に考案し、1830年(天保元年)には縞を織る機(はた)で新しい絣模様を織る方法を工夫しました。1844年(弘化元年)には藍染めの今出絣を始めたとされ、これが後の伊予絣になりました。
歴史
文化年間(1804〜1818年)には、菊屋新助が京都・西陣の高機(たかばた)を木綿絣向けに改良し、松山藩の保護のもとで生産が進みました。明治時代に入ると生産量が大きく伸び、1904年には全国の絣生産量の約25%を占めて日本一になったとされます。日露戦争の直後には、年産約247万反に達したともいわれます。その後は暮らしの洋風化とともに需要が減り、生産者はごくわずかになりました。
特徴
藍染めの紺地に白い柄が浮かぶ紺絣が中心で、白地に柄を出す白絣もあります。模様どうしの間隔を広く取り、線を太くするため、素朴な味わいがあるとされます。代表的な柄は井桁や十字で、かつては鶴や亀などを描く絵絣も特色でした。洗うほどに藍の色が冴えるとされ、大柄のものは布団地、中小柄のものは普段着や作業着に使われました。
技法
くくり(防染)
糸を染める前に、柄にしたい部分を別の糸などで固くくくり、藍が染み込まないようにします。染めた後にくくりをほどくと、その部分だけが白く残ります。この白い部分を、織るときに少しずつ合わせて柄を作ります。
藍染めと手織り
くくった糸を藍で染め、紺色に仕上げます。織るときは、たて糸とよこ糸の白い部分がずれないよう、柄を確かめながら織り進めます。今も木灰汁(あく)で藍を発酵させる天然藍建てや、菊屋式高機の復元に取り組む作り手がいます。
使用される素材
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職人・工房
白方興業株式会社
松山市の会社で、伊予かすり会館を運営し、伊予絣の技法の継承に取り組んできました。工芸店と連携し、天然藍で染めた伊予絣の座布団など、現代の暮らしに合う商品の開発にも携わっています。
イオリ工芸(白方宣年さん)
白方興業で伊予絣の主任研究員を務めた白方宣年さんが、2005年に設立した工房です。天然藍の発酵や菊屋式高機の復元に取り組み、2025年には伊予絣の県指定無形文化財の保持者に認定されました。
購入方法
- 伊予かすり会館(Art Labo KASURI)
- 松山ロープウェー商店街にある伊予かすり会館では、伊予絣を使ったコースターやポーチ、のれんなど、暮らしの品を販売しています。営業は9時〜17時で、不定休です。購入先を見る →PR
体験施設
伊予かすり会館(Art Labo KASURI)
愛媛県松山市大街道3-8-1
2019年に松山市久万ノ台から移転した施設で、伊予絣の歴史を伝える展示があります。藍染め体験や姫だるまの製作体験ができ、電話での事前予約が必要です。市内電車「大街道」電停から歩いて5分ほどです。
詳細を見る →鍵谷カナ頌功堂
愛媛県松山市西垣生町1253
伊予織物同業組合が鍵谷カナの功績をたたえて、1929年(昭和4年)に建てた八角堂で、国の登録有形文化財です。設計は愛媛県庁舎本館と同じ木子七郎(きごしちろう)です。近くの長楽寺には、県の史跡とされるカナの墓があります。
よくある質問
Q. 日本三大絣とは何ですか?
A. 伊予絣(愛媛県)、久留米絣(福岡県)、備後絣(広島県)の三つを指す呼び方です。いずれも藍で染めた糸で柄を織り出す木綿の絣で、丈夫さから普段着や作業着として親しまれてきました。
Q. 伊予絣は今も作られていますか?
A. 需要の減少で作り手はごくわずかになりましたが、技術の継承は続いています。2025年には伊予絣の技術が愛媛県指定無形文化財となり、白方宣年さんと村上君子さんが保持者に認定されました。
Q. 伊予絣にはどんな柄がありますか?
A. 晒玉、扶桑、紅梅、工夫絣、蚊絣(かがすり)、屋根絣などが織られてきました。明治時代の末ごろからは、藍以外の色を加えた色入絣も作られました。今日は十字絣や井桁絣など、単純な柄を全体に配したものが中心とされます。