石見神楽面

Iwami Kagura Men (Iwami Kagura Washi Masks)

石見神楽面 1

画像: Wikimedia Commons

石見神楽面(いわみかぐらめん)は、島根県西部の石見地方に伝わる郷土芸能「石見神楽」で使われる面です。主な産地は浜田市と江津市です。粘土の型に、強靭な石州和紙を柿渋入りの糊で何層も張り重ね、乾いた後に中の粘土を壊して取り出し、彩色して仕上げます。江戸時代には木彫りの面が使われていましたが、浜田市長浜地区で長浜人形を作っていた人形師が始祖となり、和紙の面が生まれたとされます。和紙の面は江戸時代末期から作られてきました。軽くて丈夫な和紙の面は、速く勇壮な石見神楽の舞を支えています。神楽の面のほか、般若面・天狗面・鍾馗面や大蛇の頭(蛇頭)も作られ、新築や開店祝いの魔よけ、縁起物、室内の飾りとしても親しまれています。島根県のふるさと伝統工芸品に指定されており、日本遺産「神々や鬼たちが躍動する神話の世界」の構成文化財にも挙げられています。

発祥

島根県の資料によると、神楽が神職を中心に舞われていた江戸時代には、木彫りの面が使われていました。現在の和紙の面の始祖とされるのは、浜田市長浜地区で長浜人形を手がけていた人形師です。人形師は、漆工芸の「脱活乾漆(だっかつかんしつ)」の技法を応用して和紙の面を生み出したとされます。後継の職人は、強度のある石州和紙が地元にあったことで、この技法がこの地に根付いたと語っています。

歴史

浜田市は、明治時代以降に浜田で改正神楽(八調子神楽)や校定石見神楽台本といった神楽文化が花開いたとしています。あわせて石見神楽面や蛇胴、衣裳などのものづくりも盛んになり、各地へ伝わりました。石見神楽は、石見地方の神楽を題材とした日本遺産のストーリーにも認定されています。その構成文化財には、石見神楽面のほか長浜人形や石州和紙も含まれます。2025年3月には江津市の工房が新たに島根県ふるさと伝統工芸品の製造事業者に指定され、担い手が受け継がれています。

特徴

石見神楽面は、粘土で作った型の上に和紙を張り重ねる張り子の面です。和紙の枚数で面の厚さが決まるため、職人は完成形を思い描きながら張っていきます。型を壊して取り出すため一つの型で一つの面しか作れませんが、その代わり複雑な造形を表しやすい技法です。木彫りの面より軽く丈夫で、激しい舞に向いています。彩色で表情をつくる作業が最も難しく、職人の腕の見せどころとされます。

技法

和紙張り(脱活乾漆の応用)

粘土の型に、柿渋を混ぜた糊で石州和紙を何層も張り重ね、乾燥後に中の粘土を壊して取り出す技法である。漆工芸の脱活乾漆の考え方を、長浜人形の人形師が和紙の面づくりに応用したとされる。全国的にも数少ない製法である。

彩色

胡粉を塗って下地を整えた後に色を施し、面の表情をつくる工程である。神々の髭や眉、目尻などの細かな線も筆で描き入れる。島根県の資料は、この表情づくりを最も難しい工程とし、職人の腕の見せどころとしている。

使用される素材

石州和紙粘土(原型)石膏(型)柿渋胡粉

制作工程

  1. 1

    原型作り

    粘土で面の原型を作る。

  2. 2

    石膏型作り

    原型をもとに石膏の型を作る。

  3. 3

    型抜き・乾燥

    石膏型から粘土の型を抜き、乾燥させる。

  4. 4

    面張り

    柿渋入りの糊で石州和紙を張っては乾かす作業を繰り返す。

  5. 5

    粘土壊し

    和紙が乾いたら、中の粘土を壊して取り出す。

  6. 6

    渋がけ・穴あけ

    柿渋を塗り、目などの穴をあける。

  7. 7

    胡粉がけ

    胡粉を塗って彩色の下地を整える。

  8. 8

    仕上げ

    彩色して表情を描き入れ、面を仕上げる。

主な産地
  • 浜田市
  • 江津市

職人・工房

柿田勝郎面工房

浜田市熱田町の神楽面工房。柿田勝郎は長年にわたり石見神楽面を作り続け、2020年度に地域伝統芸能大賞の支援賞を受けた。後を継ぐ柿田兼志は長浜地区の出身で、島根県ふるさと伝統工芸品の製造事業者に指定されている。面の修復や復元も手がける。

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御面屋 惠木舞工房

江津市都治町の神楽面工房で、代表は惠木勇也。2025年3月に、石見神楽面の製造事業者として島根県ふるさと伝統工芸品の新規指定を受けた。

公式サイト →

購入方法

石見神楽公式サイトの神楽工房ショップ紹介
石見神楽公式サイトは、浜田市内の神楽面工房や衣裳店を紹介している。柿田勝郎面工房のほか、長浜町の昌三庵(和紙・木彫の神楽面)や日下義明商店(神楽面・長浜人形)などが住所付きで掲載されている。購入先を見る →PR
柿田勝郎面工房
浜田市熱田町636-60の工房(電話0855-27-1731)。神楽で使う面のほか、贈答用の神楽面も扱う。公式サイトでは定休日を毎週水曜日としている。購入先を見る →PR

体験施設

界 出雲「神楽面の絵付け体験」

島根県出雲市大社町日御碕604

温泉旅館の界 出雲で、柿田勝郎面工房の柿田兼志の指導のもと神楽面に絵付けをする体験です。奇数月の第2・第4土曜に開かれ、料金は1人15,000円(税込・宿泊費別)。宿泊の14日前までの申し込みが必要です。

詳細を見る →

エクス和紙の館

島根県浜田市金城町波佐イ425-1

石見神楽公式サイトのショップ紹介に、和紙製品を扱い、玩具の面の絵付け体験ができる施設として掲載されています。料金や実施日は確認できなかったため、事前に問い合わせると安心です。

よくある質問

Q. なぜ和紙で面を作るのですか?

A. 和紙の面は木彫りの面より軽くて丈夫で、速く勇壮な石見神楽の舞に向いているためです。地元で強靭な石州和紙が漉かれていたことも、この技法が根付いた理由とされます。

Q. 神楽に使わなくても買えますか?

A. 買えます。石見神楽面は、新築や開店祝いの魔よけ、縁起物、室内装飾としても求められています。浜田市や江津市の面工房では、贈答用の面も作られています。

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