伊勢一刀彫(いせいっとうぼり)は、三重県伊勢市と玉城町で作られている木彫りの縁起物です。伊勢神宮の造営に携わる宮大工が、遷宮の残りの木材を使ってえびすや大黒を彫ったのが始まりとされます。大きなのみで木の角を大胆に削り取り、刻んだ面をそのまま仕上げ面とするのが特徴です。磨きや彩色をしないため、刀の跡と木目が素朴な力強さと温かみを生みます。材料には主に楠(くすのき)が使われ、檜も用いられます。題材はその年の干支のほか、伊勢にゆかりのある神鶏やカエルなどです。伊勢は古くから根付師が多い土地で、彫り物の技術の蓄積も背景にあったといわれます。現在は岸川行輝さんや泉廣典さん、岸川さんに師事した太田結衣さんらが技を伝えています。三重県指定伝統工芸品です。
発祥
伊勢一刀彫は、伊勢神宮の式年遷宮(20年ごとに社殿を新しく建て替える祭事)の御造営に携わった宮大工の余技として始まったと伝えられます。宮大工が神宮の御残材を使い、えびすや大黒などの福の神を彫ったのが起源とされます。時期は江戸時代とされ、全国から伊勢参りの参拝者が増えたころにあたります。伊勢にはもともと根付師が多く、彫り物の技術に優れた土地柄でした。
歴史
初期には、印籠や巾着を帯に留める根付(ねつけ)が人気を呼んだといわれます。題材には福の神のえびすや大黒、神鶏などが好まれました。参拝者が増えた江戸時代には、大工道具で彫った作品が御守として求められたとも伝わります。こうした縁起物が、のちに干支を彫った置物へと発展しました。現在は伊勢の作り手が作品展や体験講座を開き、全国各地の神社の干支制作に携わる作り手もいます。
特徴
伊勢一刀彫は、一度の刻みがそのまま仕上がり面になる、荒削りで大胆な造形が特徴です。角材から刻み出し、多いもので48ほどの面で形を表すとされます。磨きや彩色をしないため刀痕と木目が残り、素朴さと温かみを兼ね備えます。少ない面数でモチーフの特徴をどう引き出すかが、作り手の腕の見せどころです。材料は主に香りのよい楠で、仕入れた木材のうち作品に使えるのは6割程度といいます。
使用される素材
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職人・工房
岸川行輝
伊勢市桜木町に拠点を置く伊勢一刀彫師。伊勢の伝統工芸の作り手が集まる「伊勢の匠会」の一員として作品展に出品し、コースターや箸置きを彫る体験講座の講師も務める。これまでに4人の弟子を育ててきたとされる。
泉廣典
伊勢市一宇田町を拠点とする伊勢一刀彫の作り手。三重県の伝統工芸である伊勢一刀彫の継承作家として紹介されている。長年にわたり神社に関わる仕事に携わってきた職人である。
一刀彫 結(太田結衣)
2010年に岸川行輝さんに弟子入りした太田結衣さんの屋号。現代の暮らしに合う一刀彫を手がけ、全国各地の神社の干支制作や企業との共同商品にも携わる。年に数回ワークショップを開いている。
公式サイト →購入方法
- 一刀彫 結 オンラインストア
- 太田結衣さんの作品を扱う公式オンラインストア。干支の置物などを販売しており、予約販売を行うこともある。日本橋三越本店の「匠の技展」など、催事に出展することもある。購入先を見る →PR
- 生活雑貨店 cotogoto
- 「一刀彫 結」と共同で企画した干支の置物を扱う。素材は楠で、手のひらに載る大きさ。価格は1体5,225円(税込)程度、十二支のそろいは62,700円(税込)程度である。購入先を見る →PR
- 宮忠(外宮店・おかげ横丁)
- 伊勢で神棚や神具を扱う宮忠は、自社サイトで伊勢一刀彫の由来を紹介している。同ページでは、外宮前の宮忠外宮店とおかげ横丁の宮忠が取扱店として案内されている。購入先を見る →PR
よくある質問
Q. 奈良一刀彫など、ほかの一刀彫とはどう違いますか?
A. 一刀彫は、のみで刻んだ面をそのまま生かして仕上げる木彫りの総称です。奈良一刀彫は極彩色に彩るのが特徴ですが、伊勢一刀彫は磨きも彩色もしません。楠の木目と刀痕をそのまま見せる、素朴で力強い表情が持ち味です。