飯田水引は、長野県南部の飯田市とその周辺で作られる水引です。水引は、和紙をよって紐状にし、水糊で固めて色を付けたもので、祝儀袋や結納品などの贈り物を飾るのに使われます。飯田は古くから和紙づくりが盛んな土地で、江戸時代にはその和紙を使った元結(もとゆい)の産地として名を上げました。元結は髷(まげ)を結い束ねる紙の紐で、元禄時代に桜井文七が改良した品は「文七元結」として江戸でも評判になりました。明治時代に断髪令で元結の需要が激減すると、その技術を生かして丈夫で光沢のある水引が作られるようになります。現在、飯田地方は全国の水引製品の約7割を生産しています。金封や結納品に加え、鶴や松竹梅をかたどった水引細工やアクセサリーなども作られています。2014年に長野県知事指定の伝統的工芸品に指定されました。
発祥
飯田地方では古くから和紙が漉かれ、平安時代の延喜式には伊那郡から紙が献上された記録が残ります。寛文12年(1672年)に飯田藩主となった堀親昌は、丈夫で水に強いと評判の飯田の大帳紙を使った元結づくりを奨励しました。元禄2年(1689年)には桜井文七が元結を改良し、光沢のある丈夫な品を作り上げます。江戸に店を構えて広めた品は「文七元結」と呼ばれ、飯田元結の名を全国に高めました。
歴史
江戸時代後期には、江戸の元結の半分が飯田の楮紙で作られたと記録されるほどになりました。明治4年(1871年)の断髪令で元結の需要は激減しますが、飯田では元結に改良を加え、光沢のある丈夫な水引を作り出します。昭和に入ると結び方の種類が増え、金封や結納品、水引細工の生産が伸びて地場産業に成長しました。2014年に長野県知事指定の伝統的工芸品となっています。
特徴
飯田水引は、強く丈夫な和紙から作られる良質な水引です。芯は薄い和紙をテープ状にしてよりをかけたものです。水糊で固めて直接色を付けた「色水引」のほか、レーヨンを巻いた「絹巻水引」、薄いフィルムを巻いた「特光水引」など多くの種類があります。しなやかで結びやすく、多彩で独創的な造形ができるため、祝いの席を飾る華やかな細工にも生かされています。
技法
あわじ結び
水引の最も基本となる結び方で、中央で固く結ばれ、一度結ぶとほどきにくいのが特徴です。二度と繰り返さないことを願う結婚や弔事、お見舞いなどに使われます。梅結びや亀の甲結びなど、多くの結びの土台にもなります。
花結び(蝶結び)
引けばほどける結び方で、何度あってもうれしい出産や進学など、婚礼以外のお祝いに使われます。贈る場面に合わせて結び方を選び分けることも、水引の大切な作法の一つです。
田中式水引製造法
紐づくりを手作業で行っていた明治・大正時代に、飯田の水引店・田中宗吉商店が開発した製法です。屋外の作業場で水引を天日乾燥させるもので、作業効率が大きく上がり、飯田全体の水引製造が広がるきっかけになりました。
使用される素材
制作工程
- 1
紙裁ち
薄い和紙を細いテープ状に裁つ。
- 2
より掛け
テープ状の和紙によりをかけ、紐状の芯を作る。
- 3
糊付け・乾燥
芯を水糊で固め、乾かして張りのある紐にする。
- 4
仕上げ
芯に色を付けたり、レーヨンやフィルムを巻いたりして仕上げる。
- 5
結び・細工
あわじ結びなどで結び、金封や結納品、水引細工に仕立てる。
| 主な産地 |
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職人・工房
田中宗吉商店
1877年(明治10年)創業の水引の老舗で、飯田市今宮町に店を構える。大正時代に「田中式水引製造法」の特許を取得した。1998年の長野オリンピックでは、公式記念品に採用された飯田の水引6点すべてを手がけた。
公式サイト →木下水引
1961年創業の、飯田市上殿岡に本社を置く水引メーカー。元結に始まる飯田水引の技を受け継ぎ、手作りにこだわった結納品や金封を作る一方、時代の感性に合わせた新しい水引商品の開発にも取り組んでいる。
公式サイト →関島水引店
飯田市の水引店。代表の関島正浩さんは、G7軽井沢外相会合のメディアセンターや、フランスのジャパンエキスポなどで水引の実演を行ってきた職人で、飯田市内の水引教室の講師も務めている。
飯田水引協同組合
飯田水引の産地組合で、飯田市座光寺のエス・バード内に事務所を置く。水引の歴史や結納・金封の作法、水引細工の作り方などの情報を発信し、公式オンラインショップも運営している。
公式サイト →購入方法
- 飯田水引オンラインショップ
- 飯田水引協同組合の公式オンラインショップ。水引を使った金封や熨斗、結納品のほか、水引素材や元結、水引細工を作るための工具や教材まで、用途や種類から選んで購入できる。購入先を見る →PR
- 田中宗吉商店
- 飯田市今宮町3-37にある水引の老舗。結納品やのし袋、婚礼の装飾品、正月飾りなどを製造・販売している。アクセサリー作りなどに使える生水引の素材も扱う。営業は平日の9時から17時30分まで。購入先を見る →PR
体験施設
南信州まるごとショップ おいでなんしょ
長野県飯田市座光寺3349-1(エス・バード内)
飯田水引の職人を講師に、あわじ結びや梅結びを教わる水引教室を開いている。教室は1人2,500円程度で10人からの申し込み。店頭で500円程度の水引キットを買えば、1人からでも結び体験ができる。
詳細を見る →よくある質問
Q. 元結(もとゆい)と水引はどう違うのですか?
A. 元結は髷(まげ)の根元を結い束ねる紙の紐で、現在も大相撲の力士の髪に使われています。飯田では江戸時代に元結づくりが栄え、明治の断髪令で需要が減ると、その技術を改良して贈り物を飾る水引が作られるようになりました。
Q. 長野オリンピックと水引にはどんな関わりがありますか?
A. 1998年の長野冬季オリンピック・パラリンピックでは、飯田の水引細工が選手や役員、海外の報道関係者に記念品として贈られました。パラリンピックの入賞者には、水引で作った月桂樹の冠が授与されています。