江戸指物

Edo Sashimono

江戸指物 1

江戸指物は東京都台東区・荒川区・江東区などで作られる木工品で、釘を一切使わず、木材の接合部を刻んで組み合わせる「指物」の技法によって家具や小物を作り上げる伝統工芸品である。指物の歴史自体は平安時代の京都までさかのぼるが、江戸に伝わった技術は17〜19世紀の江戸の経済・文化の発展とともに独自の発展を遂げた。武家の調度品として重厚で直線的な意匠のものが作られる一方、歌舞伎役者向けの「梨園指物」や町人向けの指物では遊び心を感じさせる粋で繊細な意匠が生まれ、次第に庶民の暮らしにも浸透していった。クワ・ケヤキ・キリ・スギなど天然の木地の木目を活かし、金具の使用を最小限に抑えた簡素な意匠が特徴で、矧接(はぎつぎ)・ほぞ接ぎ・相欠き接ぎなど多様な木組みの技法によって釘を使わずとも堅牢な作りを実現する。桐たんすをはじめ、何十年も大切に使い続けられる工芸品として今も職人の手仕事が受け継がれている。1997年(平成9年)に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となった。

発祥

指物そのものの歴史は平安時代の宮廷文化にまでさかのぼり、京都で長く発展した。室町時代には大工職から専門の指物師が独立して生まれたとされる。江戸に指物の技術が伝わったのは江戸開府以降で、諸国から集まった職人たちの技が交わりながら江戸独自の指物文化が育まれていった。

歴史

17〜19世紀、江戸の経済と文化の発展に伴い、指物は武家用の重厚な調度品として発達した後、商人向けの指物や歌舞伎役者が用いる「梨園指物」として広がり、やがて庶民の暮らしにも浸透していった。武家用は直線的で重厚な意匠、町方用は遊び心のある粋で繊細な意匠へと分化し、それぞれの美意識を反映した独自の様式が確立された。1997年(平成9年)に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となった。

特徴

江戸指物最大の特徴は、釘を一切使わず木材の接合部の加工のみで組み立てる木組みの技術にある。クワ・ケヤキ・キリ・スギなど天然素材の木目の美しさを最大限に生かし、金具の使用も最小限にとどめ、過度な装飾を避けたすっきりとした造形で「江戸の粋」を表現する。矧接・ほぞ接ぎ・相欠き接ぎなどの木組み技法と拭漆や蒔絵などの加飾技法により、何十年も使い込むほどに味わいが増す堅牢な作りが実現されている。

技法

木組み(矧接・ほぞ接ぎ・相欠き接ぎ)

釘を使わず、木材同士を凹凸に刻んで組み合わせる技法。矧接は板同士を接ぎ合わせ、ほぞ接ぎや相欠き接ぎで部材を堅固に組み立てる。

拭漆・蒔絵

木地に漆を摺り込んでは拭き取る拭漆で木目を生かした艶を出すほか、蒔絵などの加飾技法で控えめながら上質な装いを添える。

使用される素材

クワケヤキキリスギ天然漆

制作工程

  1. 1

    木取り

    木材の木目や性質を見極めながら、用途に合わせて板や角材に加工する。

  2. 2

    接合部の加工

    矧接・ほぞ接ぎ・相欠き接ぎなど釘を使わない木組みのための凹凸を精密に刻む。

  3. 3

    組み立て

    刻んだ接合部を手作業で組み合わせ、釘を使わずに堅牢な構造に仕上げる。

  4. 4

    仕上げ

    拭漆などにより木目を生かした艶を出し、必要に応じて金具や蒔絵などの装飾を加えて完成させる。

主な産地
  • 台東区
  • 荒川区
  • 江東区

職人・工房

茂上工芸

1912年(大正元年)創業、蔵前に工房を構える江戸指物の老舗。3代目・茂上豊氏は伝統工芸士として指物の技を継承し、箸作りなどの体験教室を通じて江戸指物の魅力を伝えている。

公式サイト →

購入方法

江戸たいとう伝統工芸館
台東区浅草にある展示施設で、江戸指物や東京桐たんすなど台東区の伝統工芸品約250点を展示販売している。職人による製作実演が行われることもある。入館無料。購入先を見る →PR

体験施設

茂上工芸

東京都台東区蔵前4-37-10

伝統工芸士・茂上豊氏の指導のもと、銘木を選んでカンナで削り、自分だけの箸を作る体験ができる。体験料は11,000円程度〜(税込)、所要時間は約90分。

詳細を見る →

よくある質問

Q. 江戸指物にはなぜ釘を使わないのですか。

A. 釘を使うと錆びや木材の劣化により接合部が弱くなるため、矧接・ほぞ接ぎ・相欠き接ぎなど木材同士を刻んで組み合わせる技法によって堅牢さと美しさを両立させている。

Q. 武家用と町方用の江戸指物はどう違いますか。

A. 武家用は重厚で直線的な意匠が特徴なのに対し、町方用や歌舞伎役者向けの梨園指物は遊び心のある粋で繊細な意匠へと発展し、それぞれ異なる美意識を反映している。

#指物#木工#桐たんす#木組み