
播州そろばん(ばんしゅうそろばん)は、兵庫県小野市を中心に作られているそろばんです。そろばんは室町時代の末期に中国から長崎へ伝わったとされます。播州でのそろばんづくりは、天正年間(1573〜1592年)の豊臣秀吉による三木城攻めがきっかけと伝わります。戦火を逃れて近江の大津に移った住民が、そこで大津そろばんの製法を学び、帰郷後に三木・小野周辺で作り始めたといわれます。農閑期の手仕事として広まり、江戸時代に寺子屋で読み書きそろばんが普及すると大きく発展しました。製作は、珠を削る人、珠を仕上げる人、軸の竹ひごを作る人、組み立てる人の分業で行われ、工程は100を超えます。小野市は全国のそろばん生産の約7割を占める日本一の産地です。1976年(昭和51年)に国の伝統的工芸品に指定されました。
発祥
そろばんは室町時代末期に中国から長崎に伝わり、文禄年間(1592〜1595年)ごろから日本で使われ始めたとされます。播州での製造は、天正年間に豊臣秀吉が三木城を攻めた際、大津方面へ逃れた住民が大津そろばんの製法を身につけ、故郷に戻って三木・小野周辺で作り始めたことが起源と伝わります。温暖で耕地に恵まれたこの地では、農閑期の副業として根づきました。
歴史
江戸時代に寺子屋が広まり、読み書きそろばんが庶民に普及すると、播州そろばんの生産も大きく伸びました。中国式の「上2玉・下5玉」の形から改良が重ねられ、現在の形へと変わっていきます。生産の全盛期は昭和35年(1960年)ごろで、その後は電卓やコンピューターの普及、少子化で需要が減りました。1976年6月に国の伝統的工芸品に指定され、色鮮やかな「播州カラーそろばん」も開発されています。
特徴
播州そろばんは、吟味した天然素材と手作業による「珠はじき」の良さが特長です。珠には斧が折れるほど硬いといわれるオノオレカンバ(樺)や、柘植、黒檀が使われます。枠には黒檀などの堅く重い木を用い、珠を通す軸には竹ひごを使います。部品ごとに専門の職人が分業で手がけ、伝統工芸士も各部門で技を受け継いでいます。小野市は全国生産の約7割を担っています。
技法
分業制
珠を削る人、珠を染めて穴を開け仕上げる人、軸となる竹ひごを作る人、全体を組み立てる人が分業する。工程は100を超え、その多くが手作業である。一度に200〜300挺をまとめて作り、完成までに約2〜3週間かかる。
枠造・組立
枠材を加工し、竹ひごに珠を通して枠に組み込み、裏板を仕上げる工程。伝統工芸士の宮本一廣は、珠がなめらかに動き、指を離すとぴたりと止まる加減を大切にしているという。そろばんの使いやすさを左右する仕上げの要である。
使用される素材
制作工程
- 1
珠削り
樺(オノオレカンバ)や柘植、黒檀などの硬い木材から、そろばんの珠を削り出す。珠削りを専門とする職人が担当する。
- 2
珠仕上げ
削った珠を染色し、軸を通す穴を開けて仕上げる。珠の仕上げも専門の職人が受け持つ。
- 3
ひご竹づくり
珠を通す軸となる竹の「ひご」を作る。ひご竹づくりを専門とする職人の仕事である。
- 4
枠造・組立
黒檀などの枠材を加工し、ひご竹に珠を通して枠に組み込む。裏板の装飾などを施し、珠の動きを確かめて完成させる。
| 主な産地 |
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職人・工房
株式会社ダイイチ
小野市にある明治42年(1909年)創業の播州そろばんの老舗。代表は宮永信秀。2015年放送のNHK連続テレビ小説『あさが来た』で使われたそろばんのレプリカも製造して話題になった。そろばんの素材を生かした知育玩具なども手がける。
宮本一廣(伝統工芸士)
小野市で工房を営む、播州そろばん枠造組立部門の伝統工芸士。枠材の加工から珠入れ、裏板の装飾まで複数の工程を手がける。兵庫県の中学校向け道徳教材でも、その仕事ぶりが紹介されている。
購入方法
- 小野市ふるさと納税(播州算盤工芸品協同組合ほか)
- 小野市東本町403-16にある播州算盤工芸品協同組合などが返礼品を出している。上樺の珠とアフリカ黒檀の枠を使った23桁のそろばんは、寄附額4万3,000円程度〜。ダイイチによる、そろばんの素材を生かした知育玩具もある。
- 株式会社ダイイチ(通信販売)
- 小野市にある明治42年(1909年)創業のそろばん製造元。楽天市場に直販店を出し、播州そろばんを小野市から直送している。NHK連続テレビ小説『あさが来た』で使われたそろばんのレプリカも手がけた。
体験施設
そろばんビレッジ
兵庫県小野市垂井町644-5
枠や珠の色を選んでオリジナルのそろばんを作れる施設。料金は9桁で1,800円程度〜、12桁2,300円程度、15桁2,800円程度。制作時間は30〜45分ほどで、前日までに要予約。神戸電鉄小野駅から徒歩約10分。
よくある質問
Q. なぜ小野市でそろばんが作られるようになったのですか?
A. 天正年間の三木城攻めの際に大津へ逃れた住民が、大津そろばんの製法を学んで持ち帰ったのが始まりと伝えられます。農閑期の手仕事として広まり、江戸時代の寺子屋の普及とともに発展しました。
Q. 播州そろばんの国内シェアはどのくらいですか?
A. 小野市のそろばんは全国生産の約7割を占めるとされ、日本一の産地です。1976年に国の伝統的工芸品に指定されています。
Q. 播州そろばんの歴史を学べる施設はありますか?
A. 小野市王子町806-1の小野市伝統産業会館に、そろばん博物館があります。歴代名工の作品や海外のそろばん、そろばん珠で作った姫路城の模型などが展示されています。開館は9時〜17時です。