阿波和紙(あわわし)は、徳島県で漉き継がれてきた手漉き和紙です。徳島県によると、約1300年前に阿波忌部氏(あわいんべし)によって始まったといわれます。楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)を主な原料とし、水に強く破れにくいことが特徴です。江戸時代には徳島藩が製紙を保護し、明治の最盛期には吉野川流域に500軒ほどの紙漉き農家がありました。1976年(昭和51年)には国の伝統的工芸品に指定されています。藍で一枚ずつ染めた藍染和紙は、阿波和紙を象徴する品の一つです。現在は吉野川市山川町が主な産地で、障子紙や画仙紙のほか、版画用紙やインクジェット対応の和紙も作られています。山川町のアワガミファクトリー(阿波和紙伝統産業会館)では、紙漉きを体験できます。
発祥
阿波和紙の始まりは、古代の阿波忌部氏にさかのぼるとされます。朝廷の祭祀に仕えた忌部氏が阿波の地に入り、麻や楮を植えて紙や布をつくったという言い伝えです。忌部氏が麻を植えた土地は「麻植(おえ)郡」と呼ばれ、現在の吉野川市などにあたります。ただし、この伝承は神話の時代の話として伝わるもので、起源の年代は資料によって見方が分かれます。
歴史
1585年(天正13年)に蜂須賀家政が阿波に入国すると、藩は楮の栽培と製紙を保護し、奉書紙や障子紙、藩札などが作られました。明治の最盛期には吉野川流域に500軒ほどの紙漉き戸数があり、そのうち約200戸が川田川流域にあったとされます。大正以降は機械漉きの洋紙に押されて減少しました。1970年に徳島県無形文化財、1976年に国の伝統的工芸品に指定され、1989年には阿波和紙伝統産業会館が設立されました。
特徴
楮、三椏、雁皮の繊維を中心に使い、薄くても強く、水に強い紙に仕上がります。手漉きならではの不ぞろいな紙の縁「耳」を生かした製品もあります。藍染和紙は藍一色の濃淡で柄を表し、藍液に浸す時間や回数で色合いが変わります。麻や竹、木材パルプを混ぜた紙、透かし入りの紙、インクジェット対応の紙など、新しい試みも続いています。
技法
流し漉きと溜め漉き
阿波和紙では、漉き舟の中で簀桁(すけた)を前後に揺すって繊維を絡ませる「流し漉き」と、汲み上げた液をためて漉く「溜め漉き」の両方の技法が使われています。職人が一枚ずつ手で漉き上げます。
藍染和紙
徳島県産の藍染料「すくも」を使い、和紙を一枚ずつ染め上げます。藍の濃淡だけで柄を表すため、藍液に浸す時間や回数を見極める熟練の技が求められます。藍が繊維の奥まで入り、奥行きのある色味になります。
使用される素材
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職人・工房
アワガミファクトリー
吉野川市山川町で手漉き和紙を作る工房のブランドで、藤森家が営む。1952年に藤森実が富士製紙企業組合を設立し、1989年には阿波和紙伝統産業会館が開設された。国内外の作家や写真家に向けた版画用紙やインクジェット用和紙を手がけ、藍染和紙も作っている。
公式サイト →購入方法
- アワガミファクトリー(館内ショップ・オンラインストア)
- 阿波和紙伝統産業会館(吉野川市山川町字川東141)の館内で、和紙や和紙製品を購入できる。オンラインストアでも、大判の手漉き和紙やアート用紙、藍染和紙などを扱っている。購入先を見る →PR
- 伝統工芸 青山スクエア
- 東京都港区にある、伝統的工芸品産業振興協会のギャラリーショップである。2020年の取材記事では、阿波和紙の手もみ和紙ブックカバーが650円(税抜)で紹介されていた。取り扱い品目は時期により変わる。
体験施設
アワガミファクトリー(阿波和紙伝統産業会館)
徳島県吉野川市山川町字川東141
はがき判1〜3枚の紙漉き体験が1,000円、半紙判1〜2枚が1,500円で、3時間の「好き漉きプラン」は5,000円です。入館料(大人300円程度)が別にかかります。個人はオンラインで予約でき、団体と藍染め体験は予約が必要です。JR徳島線の阿波山川駅から徒歩約15分です。
詳細を見る →よくある質問
Q. 阿波忌部氏と阿波和紙はどんな関係がありますか?
A. 阿波忌部氏は、古代に朝廷の祭祀を担った氏族です。阿波に入って麻や楮を植え、紙や布をつくったと伝えられ、これが阿波和紙の始まりとされます。ただし神話の時代の伝承で、紙づくりとの関係を示す確かな記録は分かっていません。
Q. 阿波和紙はどんな用途に使われていますか?
A. 昔から画仙紙や障子紙、表具用紙、包装紙などに使われてきました。現在は、はがきや名刺、コースターなどの加工品のほか、インテリア用の大判和紙やランプシェードも作られています。版画や写真に使えるアート用紙は、国内外の作家にも使われています。