阿波藍(あわあい)は、徳島県の吉野川流域で育てられた藍と、その葉を発酵させてつくる染料「すくも(蒅)」、そしてすくもを使った藍染めを指します。吉野川はたびたび氾濫しましたが、藍は台風の前に刈り取れるうえ、洪水が運ぶ肥えた土で毎年同じ畑で育てられたため、藍作が盛んになりました。江戸時代には徳島藩主の蜂須賀家が藍の栽培と製造を保護し、阿波藍は全国の市場を占めました。明治時代に最盛期を迎えましたが、輸入されたインド藍や合成染料に押されて衰えました。現在も、藍師(あいし)と呼ばれる職人が伝統の技法ですくもをつくり、吉野川流域のすくも生産量は日本一です。2019年(令和元年)には、流域9市町の「藍のふるさと 阿波」が日本遺産に認定されました。藍住町の「藍の館」などで、藍染めを体験できます。
発祥
阿波の藍染めは、天正年間の初めごろ、三好氏が阿波を治めていた時代にはすでに行われていたとされます。三好義賢(よしかた)が堺から招いたすくも職人・青谷四郎兵衛が、勝瑞(しょうずい)城下で製法を伝えたという話も残ります。平安時代に阿波忌部氏が藍を染料に使っていたとする説もありますが、確かなことは分かっていません。
歴史
1585年(天正13年)に入国した蜂須賀家は藍の栽培と製造を奨励し、1615年には播磨から藍作の技術者を招いたとされます。藩は藍師や藍商からの税で財政を支え、阿波藍は1700年代に全国の市場を押さえました。明治時代には木綿の需要拡大で最盛期を迎え、1903年(明治36年)には作付面積が約1万5000ヘクタールに達しました。その後、インド藍や合成染料の普及で急速に衰えました。
特徴
すくもは、藍の葉を刻んで乾かし、水を打ちながら約100日かけて発酵させた染料です。阿波藍の染めでは、すくもに木灰の灰汁(あく)などを加えて発酵させる「天然灰汁発酵建て」が受け継がれています。現在の藍の作付けは10〜20ヘクタールほどで、すくもの生産者は数軒に限られます。1978年(昭和53年)には「阿波藍製造」が国の選定保存技術に選ばれました。
技法
すくもづくり(寝せ込みと切り返し)
乾燥させた藍の葉を「寝床」と呼ばれる作業所に約1.5メートルの高さに積み、水を打って発酵させます。これを「寝せ込み」といいます。その後は5日ごとに水を打って混ぜ返す「切り返し」を繰り返し、発酵の具合を見極めてすくもに仕上げます。
天然灰汁発酵建て
すくもに木灰の灰汁などを加え、甕の中で発酵させて染め液をつくる技法です。江戸時代から伝わり、化学薬品を使わずに染め液をつくれるのが特徴です。藍住町の本藍染矢野工場などが、この技法で製品を染めています。
使用される素材
制作工程
- 1
種まき
3月上旬の大安の日を選んで種をまく。
- 2
刈り取り・乾燥
6〜8月に育った藍を刈り取り、葉を刻んで乾かす。
- 3
寝せ込み
9月上旬の大安の日を選び、寝床に乾燥葉を積んで水を打ち、発酵を始める。
- 4
切り返し
5日ごとに水を打って混ぜ返し、むしろをかぶせて発酵を進める。
- 5
すくもの完成
刈り入れから約100日、12月ごろにすくもが仕上がる。
| 主な産地 |
|
|---|
職人・工房
佐藤阿波藍製造所
板野郡上板町下六條にあるすくもの製造所である。十九代目藍師の佐藤昭人は「現代の名工」に選ばれた。毎年9月に寝せ込みを始め、藍師の佐藤好昭らが切り返しを重ねて12月ごろにすくもを仕上げる。
本藍染矢野工場
板野郡藍住町にある藍染めの工場で、江戸時代から伝わる天然灰汁発酵建ての本藍染で全ての製品を染めている。染料には佐藤昭人のすくもを使う。藍染師の矢野藍秀・藍遊が藍染めの指導も行ってきた。藍染め体験や工場見学も受け付けており、料金は1,650円程度からと紹介されている。
購入方法
- あるでよ徳島(徳島県物産観光プラザ)
- 徳島市新町橋2-20の阿波おどり会館1階にある物産センターである。すだちから藍染め製品、阿波おどりのグッズまで、約2,000品目を扱う。JR徳島駅から徒歩約10分で、営業は9時〜20時(時期により異なる)である。
体験施設
藍住町歴史館 藍の館
徳島県板野郡藍住町徳命前須西172
1808年(文化5年)に建てられた藍商・奥村家の屋敷と資料館で、藍の栽培から流通までを学べます。藍染め体験は9時〜12時と13時〜15時30分に常時行われ、ハンカチは1,000円程度からです。入館料は大人300円で、火曜休館(祝日は開館)です。
詳細を見る →よくある質問
Q. 「すくも」とは何ですか?
A. 藍の葉を乾かし、水を打ちながら約100日かけて発酵させた藍染めの染料です。漢字では「蒅」と書きます。すくもをつくる職人を藍師と呼び、吉野川流域は今もすくもの生産量が日本一です。
Q. 日本遺産「藍のふるさと 阿波」とは何ですか?
A. 2019年(令和元年)5月に文化庁の日本遺産に認定されたストーリーです。徳島市や藍住町など吉野川流域の9市町が共同で申請しました。藍商の屋敷や脇町の「うだつ」の町並みなど、阿波藍の繁栄を伝える文化財で構成されています。