赤穂緞通(あこうだんつう)は、兵庫県赤穂市で手織りされている木綿の敷物です。緞通とは、縦糸に毛足となる糸を結び付けて織る厚手の敷物のことです。江戸時代後期、中村(現在の赤穂市中広)の児島なかが、高松で見た中国の緞通に魅せられ、長い試行錯誤の末に生み出しました。明治時代に商品化され、塩田で働く女性の副業としても広がり、大正時代にかけて隆盛を極めます。佐賀の鍋島緞通、大阪の堺緞通とともに「日本三大緞通」に数えられます。みっしり詰まった木綿の毛足と、握り鋏で色の境目を切り摘んで文様を際立たせる「摘み」が特徴です。茶・青・白を基調に、亀甲や蟹牡丹などの吉祥文様が織り出されます。生産は昭和に入って途絶えかけましたが、1999年に「赤穂緞通を伝承する会」が結成されて技が受け継がれています。2007年に兵庫県伝統的工芸品に指定されました。
発祥
赤穂緞通を考案したのは、江戸時代後期に中村(現在の赤穂市中広)で暮らした児島なかという女性です。なかは讃岐の高松で中国の緞通に出会って魅せられ、独自に技法を工夫しました。兵庫県は、なかが1849年(嘉永2年)に創始したと紹介しています。一方で、20数年の試行錯誤を経て商品化されたのは1874年(明治7年)とする解説もあります。
歴史
なかの嫡孫・松之助が技術を受け継いで事業を広げ、1912年(明治45年)には5軒の工房が操業していました。京の茶人や料亭、豪商に好まれ、お召し列車の内装にも使われたといわれます。昭和初期には5〜6軒で200人近くが携わりましたが、1938年に原料の木綿が手に入らなくなり、全工場が閉鎖されました。戦後に2軒が再開したものの、1991年に最後の工場も閉じます。その後、最後の織子を講師に講習会が開かれ、1999年に「赤穂緞通を伝承する会」が結成されました。
特徴
赤穂緞通の魅力は、みっしり詰まった木綿の毛足と、くっきり際立つ文様です。毛足になる「はせ糸」には撚りをほとんどかけない木綿糸を使い、独特の風合いと手ざわりを生みます。色は茶・青・白が基本で、亀甲、福寿、蟹牡丹、鳳凰など邪気を払う吉祥文様が多く見られます。蟹牡丹文には鍋島緞通、利剣文には堺緞通との影響関係がうかがえます。作業はすべて手仕事で、大きな作品では制作に数か月かかります。
技法
挟せ(はせ)
縦糸(経糸)に、毛足となる「はせ糸」を一本ずつ結んでは切っていく。はせ糸は10番手の木綿糸を21〜23本合わせたもので、撚りはほとんどかけない。高機(たかばた)でしっかり打ち込むことで、毛を緻密に織り上げられる。
摘み
織り上げた後、握り鋏ではせ糸の毛先を切りそろえる赤穂緞通独特の作業。色の境目を念入りに切り摘むことで文様が際立ち、立体感が生まれる。大変な技術と相当の根気を要する手仕事である。
使用される素材
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職人・工房
赤穂緞通を伝承する会
赤穂市加里屋2073-4に連絡先を置く団体(電話0791-45-0606)。1991年に最後の工場が閉じた後の講習会を経て、1999年に結成された。技術の保存と後継者の育成に取り組み、兵庫県も赤穂緞通の窓口として紹介している。
赤穂緞通 弥生工房(根来節子)
赤穂市古浜町119にある工房(電話0791-45-0025)。伝承する会の講習で技を学んだ根来節子さんが織り手を務め、100年以上前の緞通も展示していると紹介されている。兵庫県は同所を「赤穂緞通生産者の会」の連絡先としている。
購入方法
- 桃井ミュージアム(赤穂緞通アンテナショップ)
- 赤穂市御崎634にある施設で、赤穂緞通の展示と販売を行うアンテナショップが設けられていると紹介されている。取り扱い品や営業日は事前に確認したい。
- 工房・伝承する会への問い合わせ
- 赤穂緞通は手織りの一点物が多い。サイズや文様を相談して求めたい場合は、赤穂緞通を伝承する会や各工房に問い合わせるとよい。大きな作品は制作に数か月かかるため、時間に余裕をもって相談したい。
体験施設
赤穂緞通工房ギャラリー東浜(見学)
兵庫県赤穂市東浜町69
織り手の工房を兼ねたギャラリーで、赤穂緞通の世界を間近に見られる。見学は公式サイトのカレンダーで空きを確認し、申し込みフォームから申し込む。営業は9:00〜18:00で不定休。
詳細を見る →赤穂市立歴史博物館
兵庫県赤穂市上仮屋916-1
「塩と義士の館」の愛称をもつ市立博物館で、赤穂緞通の資料も所蔵する。入館料は大人200円、小・中学生100円程度。水曜(休日の場合は翌日)と年末年始は休館。緞通の展示状況は事前に確認したい。
よくある質問
Q. 日本三大緞通とは何ですか?
A. 佐賀の鍋島緞通、大阪の堺緞通、兵庫の赤穂緞通の3つを指します。いずれも手織りの敷物で、赤穂緞通の蟹牡丹文には鍋島緞通、利剣文には堺緞通との影響関係がうかがえるとされます。
Q. 「摘み」とはどんな作業ですか?
A. 織り上げた緞通の毛先を、握り鋏で切りそろえる作業です。色の境目を念入りに切り摘むことで文様がくっきり浮かび、立体感が生まれます。赤穂緞通ならではの手仕事です。